高低差のある土地で家づくりする場合に注意すべきこと
検討中の土地に高低差があるけど、どのようなことに注意したらいいのだろうか。
こんばんは。家の設計をしております、建築士の「いえもん」です。
家を建てるには当然のことですが土地が必要ですよね。そして、土地には様々な形状・条件のものがあります。狭かったり広かったり、日当たりが良かったり悪かったり、法的条件がいろいろと厳しかったり。
土地のパターンにはさまざまなケースがありますが、今回はよく見落としがちなポイントについて考えてみたいと思います。「高低差」です。
大小さまざまではありますが、敷地に高低差があるというケースは結構あります。なので、家づくりの序盤の土地選びでつまづくことの無いように「高低差のある敷地」に出会ったときに考えるべきことをまとめてみたいと思います。
下記のような方にぜひお読みいただきたいと思います。
■家づくりのための土地を探し始めた。
■すすめられた土地に高低差があるけど大丈夫だろうか。
■高低差のある土地はお金がかかるのだろうか。
土地を選んでから後悔しないためにも知っておいて損はないと思いますので、上記のような考え中の方はぜひご一読いただければ幸いです。
敷地の高低差は見落としがち
家を建てるための土地の候補が決まると、その土地の現況測量が実施されて、測量図が作成されます。土地を測量することによって、寸法や角度を測りながら、その土地の形状を図面に起こすことができます。
測量図があれば、その土地の正確な形状や大きさがわかるので、建てたい家のボリュームがその土地の中に納まるかどうかがわかりますね。そして、測量図には敷地の平面的な形状だけではなく、高さ方向の情報も盛り込まれています。
測量図の各所に小さな文字で数字があちこちに記載されていると思いますが、これはその位置がどれだけの高さかということを表しています。これらの数値を読み取ることによって土地の高さ情報を読み取ることができます。
しかし、いざ測量図を開いて見てみると、平面的な形状の情報にばかり目が行く方が大多数だと思います。実際に現地で土地を見たときは、高低差があるということを認識していても、図面を見ているときは結構見落としがちになる方も多いので注意が必要です。
測量図を眺めるときに、平面的な形や距離・面積だけでなく、各所のレベルについても意識して見てみるようにしましょう。
基礎工事にお金がかかるかも
例えば敷地内で高いところがあったり、低いところがあったりする場合を考えてみます。この場合、家を普通に作ってしまうと場所によって建物の基礎が地盤から浮いてしまうことになります。
当然このままでは施工不可能なので、場所によって建物の基礎を深く作ってあげる必要が生じたりします。通常の基礎よりもコンクリートや鉄筋の必要量が増えてくるので、その分お値段もかかってしまいます。もちろん高低差の度合いや、建物の大きさ等にもありますが、10万円前後で済む場合もあれば、数十万円必要になってしまう場合もあります。
擁壁の造りなおしが必要になるかも
例えば道路と敷地の間に高低差がある場合、たいてい敷地境界線沿いに擁壁があると思います。しかも、見た感じその擁壁が古そうであれば特に注意が必要です。よく、古くて高い擁壁があるような土地は避けるべき敷地の代表格なんて言われることも多いですが、このような古い擁壁は安全性が確認できないことがほとんどだからです。
家という重たいものを土地の上に載せるわけですから、擁壁にはとても大きな荷重がかかります。この時、擁壁が構造計算によって安全性が確保されていて、かつ、その安全性を裏付ける証拠となる図面や計算書が残っておればいいのですが、だいたいそんなものは保管されていないことがほとんどです。
安全性が確認できない擁壁に荷重をかけるような設計は基本的には誰もしてくれません。責任を負えないからです。
もし敷地に十分な大きさがあるのであれば、擁壁に荷重がかからないぐらい十分に擁壁から離した位置に家を建てるという選択肢もありますが、それが不可能であれば擁壁を造り直す必要が生じます。
擁壁の造り直しとなるとかなりたいそうな工事になってきます。大きさにもよりますが、数百万円、場合によっては一千万円みたいな勢いで費用が発生してきます。
古い擁壁には十分注意する必要がありそうですね。
駐車場計画が難しいかも
測量図上で寸法を測りながら車のサイズを図面に落とし込んで、車が停められそうと思っても、実はそれが難しかったりします。平面的に車が納まっていても、車を停めようとしている部分に高低差があると実は停められない、あるいは、道路と敷地内に高低差があるとそもそも車が乗り入れするのが難しい・制約があるといったことが生じます。
通常のフラットな土地に比べて、車が停められる位置が決まり切ってしまっていて、家を建てる位置や庭をどこに配置できるかについても制約が生じてくる場合があります。
では邪魔な土を掘削してしまえば良いのでは?と思われるかもしれませんが、これが結構大変になることが多いです。掘削した土は処分するのにも結構費用がかかってきますし、掘削した部分に周辺の土が流れ込んでこないように擁壁を作る必要が生じたり。
擁壁を作るとなるとあっという間に数百万円の費用が発生することも多いので注意が必要です。
特に駐車場は日々利用するモノなので、思い通りの計画ができないと非常に大きな後悔につながることになります。絶対に避けたいのは、「とりあえず細かい検討は後でもじっくりできるので」といわれて契約を急ぐ営業マンとかに強く勧められて土地購入・契約と進んでしまって、あとでよくよく詳細検討してみると駐車がとても困難、擁壁が必要となってしまうパターンです。
敷地内に駐車場を計画することが明らかな場合は、土地選定の際に高低差には敏感かつ慎重になるべきと言えるでしょう。
高低差のある土地、メリットはあるの?
ここまででいろいろとデメリットを書いてきたので、「高低差のある土地=よくない土地」と思われていますよね。確かに、注意点が多く、程度にもよりますが選ぶのに結構勇気が必要になると思います。
しかし、一方でメリットもいくつかあります。例えば隣接する土地よりも高い土地であれば、通常よりも日当たりの条件は良くなることがあります。周辺状況によっては良い眺望をまた確保しやすいということもあります。
道路側の歩行者からの視線を感じないような計画をしやすいので、プライバシーに配慮したプランニングがやりやすい可能性があります。
これらのメリットについては、実際に現地をじっくり見ながらどのくらいのメリットが
得られそうか考えてみるのが良いです。そして何より、様々なデメリットが生じうる土地なので、同じ坪数の土地に比べると通常よりも価格が安くなる傾向があります。
最終的には値段と天秤にかけながら判断ということになりますね。
まとめ
いかがだったでしょうか。どのような土地に家を建てるかを考えることは必ず必要なステップです。家づくりの序盤で失敗しないためにも、高低差のある土地に出会ったときは、ここでご説明した注意点をしっかりと確認しながら慎重に土地選びを進めていきましょう。