家づくりのガイドブックA GUIDEBOOK OF IEZUKURI

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窓の種類と特徴を徹底解説―窓の選び方を知りたい方へ

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窓の使い分け方について、じっくり考えてみませんか?

こんばんは。家の設計をしております、建築士の「いえもん」です。 

家づくりにおいて、窓は非常に重要な要素の一つです。

外観デザイン、採光・通風などの居住性、開け閉めのしやすさや掃除といった使い勝手など、検討すべき要素が非常に多く、家の出来栄えを大きく左右するといっても過言ではありません。
そんなとても重要な窓で失敗しないために、今回は数ある窓の種類ごとの特徴を整理してご紹介したいと思います。

窓の種類にはどのようなものがあるのかについて知りたい方、窓を適材適所でしっかりと選べる・使い分けられるようになりたい方はぜひ参考にしていただけるとうれしいです。 

引き違い窓

最も一般的な方式の窓で、みなさんも見慣れていると思います。あなたが今いるすぐそばにあるその窓も、もしかしたら引き違い窓ではないでしょうか。
引き違い窓は開閉もしやすく、左右にスライドして開け閉めする形式なので、窓付近にモノがあったりしてもぶつかったり、邪魔になったりすることはありません。
車いすの方にとっても比較的開け閉めがしやすい窓なので、バリアフリーという観点でも優れていますね。

比較的大きな面積の窓にすることができるので、光をしっかり取り入れた開放的な空間を生み出しやすいです。

また、開き幅を必要に応じて調節することができるという点も、使いやすさの面ではメリットといえます。例えば、風の強さに応じて開き幅を自由に調節するような使い方ができます。

その他、必要に応じて面格子やシャッターを取り付けることもできるので、防犯性能をコントロールしやすいという利点もあります。 

一方で、後述の辷出し窓などに比べると気密性は劣ってしまいます。窓を左右に滑らせて開け閉めするという機構上、どうしても窓と枠の間に隙間ができるためです。特に寒冷地などでは注意したいですね。

また、風通しに関しては後述する「縦辷出し窓」の方が優れています。外壁に垂直、あるいはそれに近い角度で吹いてきた風は当然室内に引き違い窓でも取り入れることができますが、外壁に平行に拭く風はそのままスルーで流れていってしまいます。 

そして、外側の窓ガラスの掃除が難しいです。1階の窓であれば庭から掃除することができますが、2階の窓になると、バルコニーが無い限り外側ガラスをしっかり拭こうとするとなかなか難しいです。それと、意匠的な面で引き違い窓は見た目がイマイチな印象が強いです。不用意に引き違い窓をずらっと並べすぎると、安っぽい見た目になる恐れがありますので、外観デザインにおいては注意しましょう。実際のところ、大量生産されているということもあり引き違い窓は比較的値段が安いという点はメリットともいえるかもしれませんが。

しかし、外観の見え方もやはり気を遣いたいところです。今一度図面を広げて窓を一通り確認してみてください。ほとんどすべての窓が引き違い窓になっていたりしませんか? 

縦辷出し窓 

読み方は「たてすべりだしまど」と読みます。引き違い窓よりも気密性が高いのが利点ですね。外側ガラスの掃除もしやすいのでメンテナンス性に優れていると言えます。
引き違い窓よりもデザイン的にすっきりした見た目になるので、あえて小窓にしたり、細長いスリット窓で外観のアクセントにしたりなど、サイズ・プロポーション・位置を調整してファサードに表情を与える上で有効に使いやすいです。 

風通しの面では、開けた窓がウインドキャッチャーになってくれて、効率よく風を取り入れてくれます。開閉の角度も必要に応じて自由な位置で止めておくということが可能なので、通風量の調整がしやすいです。前述の引き違い窓の欠点を補えるように、角部屋の場合はそれぞれの種類の窓を組み合わせて使うことで、積極的に風を取り入れることができるようにしたいですね。

一方で、風が強いときのあおり止めを考慮する必要があります。 

その他にも、外側に開くという開閉機構上、デメリットになる点もいくつかあります。

まず、開く軌跡の部分にモノや人があると干渉して邪魔になります。1階で外部が通路になっていたり、2階においてもバルコニー部分だと、開けたときに外側のモノに当たったり、人とぶつかったりで危険が生じる可能性があります。窓周りの動線がある場合は要注意です。隣地境界線と外壁が近接している場合も窓を開けた際の越境や、塀にぶつかる等といったことの無いように気を付けたいですね。 

また、引き違い窓とは異なって、面格子やシャッターは取り付けられません。防犯性を特に注意したい場合は窓サイズを小さくするなどを検討しましょう。例えば目安として、幅25cm×高さ45cm程度のサイズであれば、侵入は非常に困難と言えるでしょう。見通しの悪い裏手の小窓などでは不用意に大きな窓にしない等も一つの選択肢です。 

横辷出し窓 

読み方は「よこすべりだしまど」と読みます。開くときに下に下がりながら、上端にも開口ができます。前述の縦辷出し窓を90°回転させたような形で、窓の上部が吊元になるようなイメージですね。縦辷出し窓と同じく気密性に優れています。

開閉形式上、くもりガラスにしておけば、窓が開いている場合でも外から見えにくいのが利点です。トイレやお風呂、洗面室などの水廻りで重宝する窓ですね。視線を遮りながら換気を行うことができます。ただし、風通しとしては、先ほどの縦辷出し窓の方が優れています。

また、開けっ放しの状態でも、窓本体が庇のようになってくれて、雨が室内に入りにくいです。水廻りの窓はついつい開けっ放しになってしまうことも多い(防犯上は望ましくありませんが)ので、急な雨でも安心ですね。 

上げ下げ窓

引き違い窓よりも気密性が高いです。しかし、縦辷出し窓ほどではないです。
上と下の両方の窓が可動になっている「ダブルハング窓」の形式であれば、上下の両方に開口ができるので、通風をより効果的に確保することが可能です。
また、外部から侵入しにくい構造となっており、防犯性に優れているともいわれています。

その他、隣地が近接していて、縦辷り窓だと窓を開けたときに越境してしまう、外部が通路なので人とぶつかってしまうかも、というときなどに有効ですね。

見た目的には洋風の外観にマッチさせやすいです。

デメリットとしては、引き違い窓同様に外側の掃除はしにくいという点が気になりますね。

防犯性が優れていて、メンテナンス性が不利な窓、といえるので、1階の窓あるいは2階はバルコニー部分で用いるのが適材適所と言えそうですね。 

嵌め殺し窓

窓枠にガラスをはめ込み、固定した窓でFIX窓とも呼ばれます。「FIX」は「固定」の意味ですね。開けたり閉めたりすることはできないので、通風や換気は期待できませんが、眺望や採光は確保することができます。開くことがないので、誤って窓からモノが落ちたり、小さい子供が転落したりといった心配がなくなりますね。当然、窓が開けっ放しで忘れられるといったことも起こらないので、防犯上も望ましいと言えます。

網戸も不要なので、通常の窓よりもよりきれいな眺望が得られます。窓枠の形状も細くすっきりするので、窓そのものの見た目も美しいです。

このように、開かないということによる利点が色々あって魅力的な窓といえます。

デメリットとしては、2階の嵌め殺し窓は、バルコニーが無いと外側の清掃ができないという点です。  

内倒し窓 

横辷出し窓と同じく、視線を遮りつつ換気を行なうことができるので、水廻りに利用しやすい窓です。付属のフックを使うと高所でも開閉しやすいです。前述の縦辷出し窓や横辷出し窓は窓枠についているハンドルを操作して開け閉めする機構なので、窓に手が届きにくい場所の場合に、フックを使うことができるのが便利です。洗濯機の上部にある窓なんかは、手が届きにくいことが多いので、内倒し窓が活躍してくれます。

室外のスペースを気にせず設置することができるのも良い点ですね。ただし、内側に開くので、カーテンやブラインドは取り付けられません。また、横辷出し窓に比べて、雨は中に入りやすくなってきます。 

外倒し窓

煙を外に逃がしやすい形状をしていることから、火災時の排煙に効果的でどちらかというと公共施設などに使用されることが多い窓です。住宅においても高所に設けて採光や換気として利用することはできますが、開けているときに雨が降ると積極的に室内に雨が入ってくるので、住宅においては不向きと言えます。 

まとめ

以上が住宅で主に登場する窓の種類と特徴でした。

窓それぞれの特徴をおさえることができましたでしょうか。窓は建物の性能や外観、費用にも大きく影響してくる要素なので、しっかりとそれぞれのメリットとデメリットを理解した上で、適材適所な窓の選択ができるということが望ましいです。 

本記事が適切な窓選びの参考になることができればとてもうれしいです。