お風呂を2階にする場合に必ず知っておきたいことまとめ
浴室は1階?2階?どちらに設けるのが良いでしょうか。
こんばんは。家の設計をしております、建築士の「いえもん」です。
一般的にお風呂などの水廻りは1階に配置されることが圧倒的に多いですが、時々2階に設けられるということもあります。あなたが現在計画中の新居はいかがでしょうか。もしかして2階にお風呂となってたりしますでしょうか。その場合のメリット・デメリットをきちんと把握した上で、明確な意図や目的があるのであれば問題ありませんが、あとから後悔するようなことは避けたいですよね。
今回は、2階浴室となる場合の知っておきたいメリットやデメリットをまとめていきたいと思います。
2階浴室のメリット
まずは2階に浴室を設けた場合のメリットをご説明していきます。
コストを抑えたい場合
2階に浴室を設けるということが直接的にコスト削減に直結するというわけではありませんが、経済的な計画につながることがあるというように捉えていただければと思います。
2階建ての一戸建て住宅で一般的によくある階構成としては、
1階:玄関、ホール、LDK、トイレ、風呂、洗面室
2階:各寝室、トイレ
になってくると思います。
2階の部屋数、つまりは家族構成にもよると思いますが、1階の方が床面積が大きくなるパターンが圧倒的に多いです。
つまり、建築面積が大きくなる、言い換えると建物の外形が大きくなるということですよね。
建物の外形が平面的に大きいと、その分基礎の平面的な範囲も大きくなってきますね。コンクリートや鉄筋の量がその分増えていき、結構なコストインパクトがあります。地盤が弱いなどで、地盤補強時が必要な場合やさらにダメージが大きくなってきます。平面的な範囲が広がれば、必要になるコンクリート杭の補強本数も増えてくる、というようなイメージです。
また、1階の面積に対して2階の面積が小さくなればなるほど、つまり面積差が大きければ大きいほど、下屋部分が増えて屋根増えたり、建物の凹凸が増えたりしていきます。当然これらもコストに跳ね返ってくることになります。
このようにして増えていくコストを抑制するには、1階にある何かを2階にもっていって、なるべく建築面積を減らしてあげる、つまりは基礎工事の量を減らしてあげるのが有効です。
このとき2階にもっていく「何か」の候補として真っ先に登場するのがお風呂と洗面脱衣室といった水廻り関連ですね。お風呂と洗面脱衣室、それぞれ1坪ずつと考えれば、1階を2坪減らすことができて、2階を2坪増やすことができます。
建築面積を絞ると同時に、各階面積を近づけることができるので、あわよくば総2階にすることも可能かもしれません。総2階にすることができれば余計な下屋や凹凸が無くなるので、コスト的にも非常に合理的と言えます。
一方で、総2階の家は油断するとファサードがデザイン的にイマイチになりやすいので注意が必要、という別の問題はありますが。。。
逆に言うと、デザイン的な調整が付けばコスト削減が期待できるので、間接的には2階浴室によるメリットととらえることができそうですね。
LDKを広げることも可能に
前述のように、コスト削減に強くこだわっているわけではないようでしたら、浴室・洗面脱衣室を2階に上げて、残ったスペースをリビング空間の拡張に充ててもいいかもしれません。
先の例のように浴室と洗面脱衣室が合わせて2坪ということであれば、現状16畳のリビングは20畳となります。ゆったりとしたソファが置けるようになったり、テレビとソファの間に余裕をもってリビングテーブルを置けるようになるなどといった効果が期待できますね。
快適な入浴タイム
やはり1階に比べて、2階の方が窓からしっかりと光を取り入れることができます。
当然、お隣の家の窓やバルコニーの位置は考慮する必要がありますが、しっかり避けることができれば、ある程度気にせずに開けることができる窓を確保することもできます。窓が開けやすくなれば、外の空気も取り入れやすくなりますね。
明るい光と新鮮な空気に満ちた、良質な入浴時間を過ごすことが可能です。
快適な入浴時間が実現できれば、これは2階浴室の大きなメリットと言えそうですね。
プライバシー、防犯
入浴や脱衣など、プライバシーな行為として使われる浴室や洗面脱衣室が、寝室などと同じように2階に存在するということは、非常に理にかなったレイアウトとも言えます。
LDKは家族みんなで過ごす場所であり、ときには来客などで友人・知人・親戚が来ることもありますよね。つまりはパブリックな場所という位置づけになります。
そのようなパブリックな場所が存在する1階にプライバシーな空間であるお風呂や洗面室を配置すると、来客と鉢合わせしたりするという気まずいことも生じ得ます。
1階と2階でしっかりと「パブリック」と「プライバシー」を分けるという観点ではとても明確な考え方だと思いますし、メリットとしても大きいと感じます。
また、二次的なメリットかもしれませんが、防犯的にも多少有利になると考えられます。
家の裏手にある水廻りの小さな小窓は、結構換気するときに開けっ放しの状態で忘れられることが多く、侵入者のターゲットになりやすい部分でもあります。
このような弱点になりやすい窓が丸ごと2階に行くことで、少しでも侵入が困難になるので、防犯上のメリットとしても有意義ですね。
家事動線
お風呂が2階に行けば、おのずと洗面脱衣室も2階についていく形になると思います。そしてこの洗面脱衣室には洗濯機があります。
あらゆる家事の中でも洗濯は繰り返し移動を伴うことも多く、家事負担の低減という観点では非常に重要な家事動線であると考えています。
どこに洗濯物を干すのか(庭?バルコニー?室内干し?)、どこにたたんだ洗濯物を片付けるのか(各寝室?共用のウォークインクローゼット?)にもよりますが、洗濯時の移動距離の短縮化のためには洗濯機をどこに置くかは重要です。
例えば2階のバルコニーに干す、乾いた洗濯物は2階の共用WICに片付けるといった場合は、非常に効果が大きそうですね。
2階浴室のデメリット
ここまでのところで、2階浴室のメリットをまとめてきました。次はデメリットについてみていきましょう。
音・振動
2階に浴室がある場合、1階の部屋に音が聞こえてくるというような問題があります。
例えば1階リビングの上部2階に浴室がある場合、シャワーの水が床を跳ねる音、お風呂用の椅子を引きずるときの音、また、洗濯機の振動音なんかも気になる場合があります。
PS(パイスペース)
デメリットというわけではありませんが、2階に浴室を設ける場合は、給水や排水の配管のためのPS(パイプスペース)が必要になってきます。
このPSはなるべく水廻りに近い場所である方が、配管の長さも短く済むので経済的になると言えます。
もし離れすぎている場合、配管が余分に必要になるというだけでは天井がさがるというケースもあります。
配管内の排水がスムーズに流れてくれるように、排水配管には一定の勾配を与えて敷設しますが、長くなればなるほど、配管は下がってくるので、その分天井も下げなければ配管が天井裏に納まらないといったことが生じる恐れがあります。
なので、PSの位置というのはしっかり確認しておく必要があります。
漏水について
2階の配管に何らかの不具合があった場合、1階の天井からしっかりと水が漏れてくることになります。
一方で、水漏れに確実に気づきやすいというメリットになるという考え方もあります。
漏水に気づかないまま放置してしまって、柱や梁などの木材が濡れて腐ってしまうと大変です。
また、2階に設置する洗濯機からの漏水で水浸しになることを防ぐためにも、洗濯パンを設置することをお勧めします。
持ち込む予定の洗濯機や、入居時に買い替える予定などもあるかもしれませんが、実際に置く洗濯機と洗濯パンの相性はしっかり確かめておきたいですね。サイズ的にパンの上に洗濯機がうまく載せられないとなると厄介ですもんね。
1階で手が洗えなくなってしまう
外から帰ってきたときに、洗面室で手を洗うことが多いと思いますが、これができなくなってしまいますね。
帰宅時に毎回2階に上がって手を洗うのも面倒ですし、かといってキッチンで手を洗ったりうがいしたりするのは気が引けますよね。
小さくて簡易なものでもいいので、帰宅時用の手洗器が一つ玄関廻りにあれば重宝しそうですね。
老後のこと
お風呂は毎日使うものです。毎日使うものが2階にあるのは、老後のことを考えるなかなかつらいかもしれません。何十年も先にご自身の体がどこまで衰えているのかはなかなか難しくてわかりませんし、案外ずっと元気かもしれません。
じっくり考えて慎重に判断しましょう。
売れないかも
将来的にもしご自宅を売却するとなった時に、なかなか売れないかもしれません。上記のような様々なデメリットがあるという点、2階浴室はメリットもあるものの、やはり1階浴室に比べるとマイノリティであるという点も一因と言えそうです。
1,2階の上り下りが苦しくなってきた老後に、売却して住み替えようとしても値段を下げなければなかなか売れないといった状況も生じることがあるかもしれません。
永住する前提になるといっても過言ではありません。
水圧
1階で使うお風呂よりも、2階で使う方が水圧が不足することがあります。やはり重力に逆らって2階まで水を上げていくにはそれ相応の水圧が必要なんですね。
水道管はΦ20以上は必要です。
まとめ
いかがでしょうか。2階浴室のメリットとデメリットをまとめました。
メリットととしては、特にコスト低減につながる可能性があるということ、その他には快適性、防犯性、プライバシーなどですね。
一方デメリットとしては、老後のこと、将来的な売却が今後のライフプランに大きく影響する可能性がありそうなので、特に慎重に判断する必要がありそうですね。
良い点と悪い点、しっかり把握したうえで、お風呂の位置を決めるようにしていきたいですね。