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使いやすい魅力的なバルコニーを作るための方法まとめ

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バルコニーで風を感じながらくつろぐ時間に大きな魅力を感じます。

こんばんは。家の設計をしております。建築士の「いえもん」です。 

今回はバルコニーについて考えていきたいと思います。
2階建て以上の家はほとんどの場合、バルコニーが設けられていて、そこで洗濯物や布団を干したり、少しスペースに余裕があるバルコニーの場合はちょっとした椅子を置いてくつろいだり、かなり余裕のある広さであればテーブルも置いて食事やティータイムなどといったオシャレな使い方もできるかもしれません。 

そんなバルコニーを作るときに、どのようなポイントに注意していれば使いやすくできるか、また、どのような工夫で魅力的なバルコニーを作ることができるか。

 さっそくまとめていきたいと思います。

バルコニー・ベランダ・テラスの違い 

バルコニーに似たような名称でベランダという呼び方もありますよね。
そもそもこれらの違い、それぞれの定義って何なのか。

結論から言うと屋根の有無です。 

「バルコニー」は室外に張り出していて、上部に屋根がかかっていない部分のことを指し、「ベランダ」は、同じく張り出しているけど上部に屋根がついている場合を指します。

なお、「ルーフバルコニー」は下の階の屋根を上階のバルコニーとして利用する場合を指します。

また、「テラス」の場合は、バルコニーやベランダが2階以上の階での張り出しであるのに対して、1階レベルのスペースの場合で、地盤綿よりは一段高いレベルでコンクリートやタイル、デッキなどで床を構成し、室内空間と段差なくつながりを持った場所を指します。

本記事では主に2階以上における「バルコニー」や「ベランダ」を想定して触れていきたいと思います。

バルコニーのサイズについて 

まず最初に確認すべき点としてはバルコニーのサイズです。

「奥行き」と「幅」の両方について確認した上で、必要な機能が果たせるかどうかをチェックしましょう。

「バルコニーの奥行き」としては有効で90cmあれば、まずは必要最低限の機能が果たせます。つまりは洗濯物を干したり、布団を干したりするのに不自由はしない寸法と言えます。マンションなんかではこの程度の寸法はだいたい確保されていて、場合によっては1m以上の奥行きがあることも多いです。

ここで注意が必要なのは、木造住宅の場合、バルコニーの奥行きが910mmで計画されることが多いということです。この場合、壁厚を差し引くと結局有効奥行き寸法としては70~80cm程度になります。

今現在の住まいにバルコニーがあればまずは一度奥行きを測ってみてください。その寸法に対して、日々の物干し等の際に不便を感じているか、あるいは十分かを考えてみてください。必要な奥行きがどれぐらいかが見えてくると思うので、必要に応じてバルコニーの奥行きを見直していきましょう。

そして、物干し以外にも、椅子やテーブルを置いて楽しみたいというような場合はもっと奥行き寸法が必要です。配置したい家具の寸法にもよりますが、最低でも1.5mは確保したいところです。

バルコニーでの食事でホットプレートやグリルの使用が想定される場合は、コンセントも忘れずに設置しておきましょう。コンセントがあれば、季節によっては電飾などもできていろいろな使い方ができ、何かと便利です。

「バルコニーの幅」については、干す布団の枚数、つまりは家族の人数と照らし合わせて考える必要があります。
一般的な布団のサイズとしては一人あたり1m程度です。4人家族でいっぺんに干そうと思うと4枚で10cmずつぐらい布団同士の空き寸法を見込んでいくと4.5mぐらいのバルコニー幅が必要になってきます。
この長さのバルコニーが無理なく確保できれば良いのですが、敷地形状などの制約によって必ずしも十分な大きさを確保できないことももしかしたらあるかもしれません。その場合は移動式・折り畳み式の物干しの併用も視野に入れる必要もあるかもしれません。 

バルコニーは狭すぎると使い勝手が悪く後悔することが多い場所です。十分な広さがあれば、洗濯物が一発ですべて干せて、人数の多いご家族の場合は家事を行う上で効果的な時短にもつながり、何かとメリットも多いです。

しかし、逆に広すぎて後悔するということも結構あります。思ったより、外でバーベキューとかしなかった、そんなにスペースが必要なかった。。その割に広い分掃除も大変。。みたいなケースです。バルコニーは外部空間なので積極的に汚れてくる場所でもあるので。

なのでバルコニーのサイズは後悔の無いように慎重に設定していきたいですね。

バルコニーの位置 

敷地の中でバルコニーをどこにレイアウトするかについては、日当たりプライバシーが影響してきます。もちろん日当たりだけで考えれば、南面が最も有利ですね。洗濯物が乾く時間も短く済みます。

しかし、人通りの多い道路に面してしまうとか、向かいや隣の家の窓などから視線があって、洗濯物が丸見えとかもできれば避けたいです。周辺状況を今一度しっかり確認しておきたいですね。また、必ずしも南側でなくとも、午前中に干すことが多いのであれば東とか、洗濯物を干す時間帯によっても幅は広がりそうです。

そして、家の中でのバルコニー位置としてはやはり家事動線をしっかり想定しておきたいですね。

最も多いパターンは1階の洗面脱衣室に洗濯機が置いてあって、そこから階段を上って、バルコニーに向かうという形。

洗面脱衣室⇔階段、階段⇔バルコニーの距離をできる限り最短距離にしておきたいです。あとはバルコニーがどこに面しているかです。

階段を上がってすぐの廊下に面してバルコニーに出入りすることができれば家事動線的には一番理想ですがこの場合、廊下が長くなったりすることが多く、各部屋の面積が小さくせざるを得ないというデメリットが生じることが多いです。

どこかの部屋に入ってからでないとバルコニーに出ることができないとなると、お互いに気を遣ってしまったり、プライバシー的にも望ましくはありません。また、洗濯物を持った状態でドアを開けて部屋に入るというひと手間が増えてしまうのも毎日の家事の負担を考えると、これも望ましくありません。ですがこの場合は、廊下の面積をコンパクトに抑えやすく、各部屋の広さを確保する上ではメリットになってきますね。 

バルコニーの手すりの仕様について

まず、手すりの高さについては転落防止のため、建築基準法で110cm以上確保するように規定されています。また、この高さ寸法を確保していたとしても、小さいお子様にとって足がかりになるようなものが付近に無いか十分注意してください。特に室外機をバルコニーに設置する場合はレイアウトに要注意です。

横桟があるようなデザインの手すりだとよじ登ることができてしまうのでこれも注意が必要です。縦桟の場合であればよじ登ることはできませんが、支柱のピッチが大きいと隙間をすり抜けてしまうので危険です。支柱の間隔は子供の頭の大きさを基準として9~11cm以下に抑えておきたいところです。

上記を踏まえ、安全性の観点のみで考えると、スキマの無い壁形状の手すりが理想的です。外観をシンプルな箱型のデザインとして表現したい場合は意匠的にも有効です。あるいはタイルを張るなどでバルコニー部分の壁を外観のアクセントにするという手法も選択肢として挙げられます。ただし、この場合の性能的なデメリットとして、採光・通風・防犯性能の低下が考えられます。

壁型で隙間が無くなることによって光や風通しが届きにくくなります。

バルコニーの壁によって外からの視線が遮られることは、侵入者にとって隠れ場所になりやすいというデメリットにもつながります。基本的に泥棒は1階で道路から見えにくい位置にある裏手の窓から侵入することが多いですが、周辺の状況によっては2階バルコニーからの侵入が狙われることも多いです。

一方、これはデメリットの裏返しで、道路側からの視線が遮られることは室内のプライバシーは向上するという点も知っておきたいですね。

よって、

●プライバシーや外観デザインを優先するなら、壁型の手すりにして、その代わりに窓を防犯性能の高い製品に変える、防犯シャッターを設置する、ホームセキュリティを検討する。

あるいは、

●防犯性能や通風・採光などの機能面を優先するなら見通しが効いてスキマのある手すりにしておき、カーテンやブラインドなどのウインドートリートメントでプライバシー性の向上を図る。

といったような選択が考えられるでしょう。

その他、布団の干しやすさについてもメリット・デメリットが分かれてきます。

壁タイプのバルコニー手摺の場合、手すり上端の厚みが大きいので、布団を干した時に固定するための洗濯ばさみが使いづらいということが生じます。また、布団を干した時の通気性も劣ってきます。

縦桟や横桟の入ったスチール製の手すりであれば、布団用洗濯ばさみを使いやすく、より風にもしっかりとさらされるため、布団干しの観点からは望ましいです。

壁タイプの手すりのこうした布団干しデメリットを補う方法としては、トップレールを設ける、あるいは、下半分は壁タイプで作って、上半分は縦桟・横桟の入ったスチール製の手すりデザインにするなどの手法が挙げられます。

水 

バルコニーで用意しておいてよかったとよく言われるものがあります。

水です。

バルコニーの隅っこに外壁からにょきっと蛇口が一つあるだけでかなり重宝します。

外部空間なので、バルコニーはやはり結構汚れます。掃除の頻度も高い場所になるので、そのたびに室内に入ってバケツに水を汲んでバルコニーに持ってくるのは大変です。バルコニーでの食事会があったり、何か洗ったり、園芸をする場合は植物の水やりといった場合にも便利です。

やはり2階に水があるのは何かと重宝されます。

そもそもバルコニーは必ずしも必要か?

ここまでバルコニーについて、長々とまとめてきましたが、そもそもバルコニーが必ずしも必要かどうかという点についても、一応考えておきましょう。もちろんあった方がいいのは言うまでもありません。

しかし、ライフスタイル的に実はバルコニーは必要ないという方も最近ではたまにいらっしゃいます。

共働きで日中誰も家おらず、洗濯物干しっぱなしだと雨が心配。最近では洗濯機の乾燥機機能も発達してきて、浴室乾燥機で室内干しも可能。布団乾燥機も優れた商品が増えてきているので、そもそも無理に外に干す必要もなさそう。折り畳み式の室内物干しとサーキュレーターで乾かすという方も結構多いです。

花粉症やアレルギーでそもそもあまり外に干したくない。最近ではPM2.5も気になるし。1階で庭が確保できるのであれば、いざとなればそこで干せるし。。等

まさに、近年のライフスタイルの変化、技術の発達といった、時代の変化がバルコニーの要否に影響してきている感じです。

で、よく考えたら実は必要無いかもしれないバルコニーを無理に作って、掃除する範囲を増やすよりかは、室内空間の広さをより充実させたいという意見も増えてきているという状況です。 

まとめ

以上、バルコニーを計画する際の注意点やポイントなどを総まとめしてみました。

バルコニーの位置やサイズ、手すりの仕様など、様々な点を確認する必要があります。

特に安全性にかかわる点は十分にチェックして得おきべたようにそもそもバルコニーが本当に必要かどうかも念のため、ご家族のライフスタイルを振り返ってみて今一度再考しておきましょう。