コンクリート住宅のメリット・デメリットと美しいデザイン事例10選
出典:「HAVKIN architects」HPより
こんばんは。家の設計をしております、建築士の「いえもん」です。
今回はコンクリート住宅の特徴について、メリットとデメリットをまとめつつ、コンクリートの質感が美しくて魅力的なデザインの事例もご紹介していきたいと思います。家の作り方には木造、鉄骨造、コンクリート造といった感じで、使用する材料の種別によっていくつかの選択肢があります。それぞれについて、メリット・デメリットが異なってきますので、もしコンクリート造で家づくりをご検討されている方は本記事の内容をしっかりと押さえていきましょう。
コンクリート住宅とは
コンクリート住宅とは文字通りコンクリートでできている住宅のことです。もう少し厳密に言うと、柱や梁などといった主要構造部が、鉄筋の入ったコンクリートで構成された住宅のことで、木造や鉄骨造に対して「鉄筋コンクリート造」または「RC造」などと呼ばれます。「RC造」とはReinforced Concreteの略ですね。
コンクリート住宅のメリット
では次に、コンクリート住宅のメリットをご説明していきます。
耐久性・耐震性
鉄筋コンクリート造の建物は、適切なメンテナンスを施すことによって70~100年ももつ言われています。
鉄筋コンクリート造はコンクリートの中に鉄筋が入っていますが、これは強度上非常に合理的な仕組みです。コンクリートは圧縮に強く、鉄筋は引張に強いので、それぞれの材料的な長所が組み合わされつつ、弱点を補うような特性を持っています。これによって、地震の揺れに対しても優れた耐震性能を発揮します。建物の剛性も高くなるので、揺れも感じにくくなるのです。
耐火性
不燃材料であるコンクリートで建物が作られるので火災に対しては非常に強い家が出来上がります。 火災保険料が木造の建物に比べて半分以下になるという点も良い点ですね。
遮音性
鉄筋コンクリート造の建物は遮音性に優れています。隙間ができにくいので気密性の高さによって遮音性能が向上します。また、一般的に重い材料ほど防音性能が高くなるため、コンクリートの材料的な利点であると言えるでしょう。
敷地が幹線道路沿いで騒音が気になる、近隣に気兼ねなくシアタールームで大音量で映画や音楽を楽しみたい、ピアノやドラムなどを趣味で演奏するといったご家庭には適していますね。
デザインの自由度が高い
コンクリートは型枠に流し込んで固めるという作り方なので、造形の自由度が高くデザインの幅が広がります。また大きな空間を構成しやすいことから間取りの自由度も高く、木造や鉄骨造に比べてより自由なプランを検討しやすいと言えます。大空間を構成しやすいということは例えば、
■広々として大きな窓のある開放的なリビング空間を実現したい
■1階を店舗やオフィスとして利用したい
■家の中に駐車場を計画するビルトインガレージにしたい
などといった多様な要望にも応えやすい構造であるといえるでしょう。
意匠性
コンクリート打ちっ放しの質感は、その独特の風合いから人気も高いです。一般的に、「モダン」「シンプル」「クール」「スタイリッシュ」といった印象もあり、コンクリートの質感が生かされた空間での暮らしに憧れを持たれる方も多くいらっしゃると思います。
コンクリート住宅のデメリット
引き続き、コンクリート住宅のデメリットをまとめていきます。
重い
鉄筋コンクリート造の住宅は、木造や鉄骨に比べて建物自体が重たくなります。建物の自重が増すために、それを支えるしっかりとした強い地盤が必要になります。したがって、木造や鉄骨造であれば問題なく建物を建てることができるような土地でも、鉄筋コンクリート造で計画する場合には杭を打つなどの地盤改良が必要になってしまうケースもしばしばあります。
工期が長い
鉄筋コンクリート造は、他の構造の建物に比べて工期な長くなりやすいと言われています。木造や鉄骨造は部材を組み立てて建物を作っていきますが、鉄筋コンクリート造の場合は型枠を組み立てて、鉄筋を配筋して、コンクリートを流し込んで、コンクリートが固まるのを待って、固まったら型枠を外して、といった具合に工程が多く時間と手間がかかってしまいます。 規模にもよりますが、一般的に工期半年以上はかかると考えておくべきでしょう。
コスト
鉄筋コンクリート造の住宅は費用が高くなりやすいです。これは前述の通り、工期が長くなりやすいことによって人件費が高くなりやすい、サッシや防水工事などがコンクリート造専用の高額仕様になる、地盤改良工事が必要の場合には百万円を超えるスケールで費用に影響してくるなどといった要素に起因します。
もし鉄筋コンクリート造の家を作る場合は、予算管理に十分注意して計画する必要があります。
ちなみに、解体するのに最も費用がかかるのも鉄筋コンクリート造です。せっかく耐久性に優れた建物ですので、長きにわたり世代を超えて受け継いで住み続けることができるのが理想ですね。
メンテナンスにも注意が必要
これは鉄筋コンクリート造に限った話ではありませんが、建物に住み続けるには適切な維持管理が必要です。耐久性に優れたコンクリート住宅ではありますが、きちんとしたメンテナンスが前提となることは覚えておきましょう。
コンクリートに生じる経年劣化としては、雨による黒ずみやひび割れなどが挙げられます。街中で黒ずんで汚れたコンクリートの塀などを見かけられたことがあるかもしれませんが、家の外観があんな風になってしまうと美観上望ましくありませんよね。
また、コンクリートという材料特性上ひび割れを完全に防ぐというのは困難で、年数とともに徐々に表面にひび割れが生じてきます。ひび割れが進行していくとコンクリートの中性化が進み、最悪の場合内部の鉄筋にもダメージを与えてしまうことにつながります。
これらのような経年劣化を最小限にとどめるために、最低でも10年以内程度の頻度で撥水材を塗布して雨への耐性を高める、弾性塗料を塗布してひび割れを抑制したりといったメンテンナンスを行うのが理想的です。
断熱性
コンクリートという材料は熱伝導率が高いという材料特性を持っています。熱伝導率とは簡単に言うと熱の伝わりやすさです。したがって建物の内側も外側もコンクリート打ちっ放しの状態だと、外の温度がすぐに家の中に伝わってくるので、冬は寒く、夏は暑いという状態に陥ってしまいます。快適な居住環境が損なわれる、空調費用が高くついてしまうといったことの無いように、適切な断熱計画が必要であるという点に注意しましょう。
断熱計画がおろそかになってしまうと、冬場は結露が発生しやすくなってしまいます。壁の結露をしょっちゅう拭かなければならない、カビの原因になるといったことのないよう、断熱対策は万全に行いましょう。
無機質なイメージ
コンクリートの質感の人気が高いのは前述の通りですが、もちろん人によって好みは分かれてきます。「無機質」「冷たい、寒々しい」「重々しい」といった印象を持たれる方もいらっしゃいます。一方で、表面にタイルを張りやすかったり、杉板型枠で木目のような質感をつけて温かみを演出したりと表現の幅は広いので、アイデア次第で好きになる方もいらっしゃいます。まずはいろいろなデザイン事例を見てみるのも良いでしょう。
コンクリートの質感が美しい住宅デザイン事例
ここからは美しいコンクリート住宅のデザイン事例を以下にご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
外観のアクセントとして
出典:「HAVKIN architects」HPより
コンクリート独特の質感をアクセントウォールとして外観のファサードを構成すると、モダンでスタイリッシュな印象を演出する上で非常に効果的です。無機質なコンクリートの特徴をうまく生かし、モノトーンでシンプルなデザインを構成することによって、上品で洗練されたイメージの外観になります。
庭のアクセントとして
出典:「HAVKIN architects」HPより
庭にもちょっとしたコンクリートのアクセントウォールがあると魅力的ですね。コンクリートは見た目的にも植栽の緑との相性も良いです。また、杉板型枠によってコンクリートの表面に木目模様の凹凸が与えられ、落ち着きのある質感を生み出すことができます。
玄関前の出迎え空間に
出典:「ES ARQUITETURA」HPより
玄関前の駐車スペースです。コンクリート天井が電球色の照明で照らされることによって、温かみのあるエントランス空間となっています。一般的に冷たい印象を与えがちなコンクリートですが、照明の光によって独特の雰囲気を生み出しています。葉が下から照らされることによって生まれる植栽の陰影も非常に美しいです。
素材の対比が美しい
出典:「HINZ STUDIO」HPより
http:/hinz.vn/
出典:「BOURGEOIS/LECHASSEUR ARCHITECTES」HPより
階段部分にコンクリートの質感を取り入れた事例です。どちらもコンクリートの素材と木の素材が組み合わされた空間となっています。無機質コンクリートと、温かみのある木の質感のコントラストが空間に大きな魅力を与えています。
廊下沿いにコンクリートの質感
出典:「LLOSA CORTEGANA ARQUITECTOS」HPより
コンクリートの壁が印象的な廊下空間です。重厚感が強くなりがちなコンクリートですが、ハイサイドライトによって自然光を取り入れて開放感・軽やかさを併せ持った空間が生まれています。
インテリアのアクセントウォールとして
出典:「HAVKIN architects」HPより
白く明るい爽やかな空間の中でしっかりとアクセントとして機能するコンクリートの壁は存在感が強く、印象的な雰囲気を生み出してくれます。厚みのある塊のような表現も、コンクリートならではの特徴と言えるでしょう。
サニタリー空間の壁に
出典:「HAVKIN architects」HPより
洗面室やトイレといったサニタリー空間の壁にコンクリートの壁を取り入れるのもおもしろいですね。丸くくりぬかれた窓も特徴的です。型枠によって自由度の高い造形が可能なのも、コンクリートの材料的な魅力と言えるでしょう。
ダイニング・キッチンのアクセントウォールとして
出典:「HAVKIN architects」HPより
正面に見えるキッチンの壁をコンクリートのアクセントウォールとした事例です。コンクリートの色や質感に合わせて、床・キッチン・家具をモノトーンで構成していくことによって、空間全体がクールでスタイリッシュな印象です。料理や食事が楽しくなり、来客のときにも自慢のおもてなし空間になりそうですね。
コンクリートの中庭
出典:「b.e architecture」HPより
コンクリート造の住宅に中庭がある事例です。無機質な質感の中庭が逆に緑を引き立たせ、植栽の影も美しく見えます。コンクリートのグレーが切り取る青色の空も印象的な素晴らしい中庭空間ですね。
以上がコンクリート住宅のデザイン事例です。お気に入りのデザインアイデアは見つかりましたでしょうか。コンクリートの住宅はデザイン的にも人気が高く魅力的ですが、住宅会社によっても得意不得意が様々である点も注意が必要です。特にコンクリートは施工の熟練によって仕上がりの美しさも大きく変わってくるので、業者選びも重要であると言えます。下記のような無料サービスからコンクリート住宅を得意とする業者を探すのも効果的でしょう。
これから家づくりを始められる方は下記の記事も合わせてお読みいただけると参考になると思います。家づくりの成功の秘訣は事前の下準備にあります。今の内から理想の家を手に入れるために備えておきましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回はコンクリート造の住宅の特徴・メリット・デメリット、デザイン事例をご紹介させていただきました。木造も鉄筋コンクリート造もそれぞれの長所と短所があります。どちらを選択するかによってデザイン的な印象もガラッと変わってきます。それぞれの特徴をしっかりと理解した上で、より理想に近い家づくりを実現してくださいね。