バスコートで豊かな浴室を
出典:「MM++Architects」HPより
こんばんは。家の設計をしております、建築士の「いえもん」です。
お風呂での入浴を癒しの時間にしたいと願う人はたくさんいると思います。「バスコート」はそんな願いにこたえる有効な手法の一つになるかもしれません。バスコートとは、浴室とつながる庭やテラスのことを指します。「Bath Court」ですね。
マンションの場合はお風呂に窓がないということも多いですが、せっかく戸建てで家を建てるのであれば、ぜひ窓のあるお風呂を実現したいですし、窓から美しい景色が見えるような浴室が実現できればとても素晴らしいですよね。
外の景色を眺めながら、自然光を浴びながら入浴時間を楽しむことができる、お風呂好きにはたまらない選択肢であると言えます。今回はこのバスコートという選択肢について考えていきたいと思います。
バスコートの計画の仕方や注意点、事例やアイデアをご覧になられたい方におすすめです。
バスコートのメリット
浴室に窓があることによって、採光や風通しが確保することができるのはメリットですが、何よりもお風呂に庭が面しているということによって美しい眺めを確保することができるというメリットが特に大きいと言えます。
バスコートにデッキを設けておくなどすれば、季節によっては入浴後に外に出て風を浴びるなどしてくつろぎの時間を確保することもできますし、物干し場としても使うことができるという機能的なメリットも考えられますね。
バスコートの作り方
出典:「Padvani Arquitetos Associados」HPより
敷地いっぱいに家を建てると自ずと細長い通路上の空地が残ってきますよね。このような人がやっと通れるようなわずかなスキマ空間はなかなか有効活用されることなく、せいぜい室外機を置くためのスペースぐらいにしかならないことが多いです。
しかし、周囲からの視線を遮るための高さを持つ塀を建て、植栽を植えて、あとは浴室に窓があればバスコートが簡単に出来上がります。塀は植栽の背景にもなるので、仕上げの色や質感にこだわってみるのも楽しいですね。上記の写真の事例では、凹凸の強い表情豊かな石を使った塀を植栽の背景として計画しています。質感豊かな素材を使うことで植物を際立たせるとともに、夜はライトアップして美しい陰影も生み出すことができるので、より幻想的な雰囲気を演出することができそうです。
このように、わずかに余った空地を生かすことで緑を視覚的に楽しむことができる入浴時間を創出することができます。
日中の入浴時には日差しも十分に取り入れられるように、可能であれば配置・方角にも配慮して計画したいですね。
窓を開ければ風を取り入れながら外気を感じることができ、さらにはドアで外部へのアクセスを確保してテラスとのつながりのあるバスコートも考えられます。
2階に浴室がある場合は奥行きを少し大きく確保したバルコニーに面してお風呂を配置し、バルコニーと浴室の間に窓を設けることでバスコートが出来上がります。
例えばバルコニーに南国風のヤシの木の鉢植えを置いてあげるだけでもかなり雰囲気が出てきます。
バルコニー手摺の高さは通常は1100mmが標準的な寸法ですが、あえてもっと高くしていくことで外からの視線をしっかりと遮断します。外界からは自然光が差し込むだけです。一方、浴室内から外を見たときも、町の景色や隣の建物は一切見えなくなります。見えるのはバスコートと空だけです。
外界としっかり遮断され、プライバシーが確保された非日常的なバスコートが生まれます。
また、お風呂だけではなく洗面室もバルコニーに面するように配置することができれば、選択するときの物干しが非常に楽になりますね。
バスコートの注意点
出典:「SOLOMON TROUP」HPより
魅力的なバスコートですが、注意したいポイントもあります。一般的に浴室はプライバシー性の高い空間であることから、窓は必要最小限として、基本的には閉ざす方向で計画するのが基本です。それをあえて積極的に外部空間との関わりを持たせるということは、必然的に、防犯やプライバシーに関して十分に注意して計画する必要が生じてきます。
お風呂に入るときに、近隣のお家からの視線はやはり気になると思います。窓の外を見るとお隣の窓が近くにあるみたいな状態になると落ち着いてお風呂に入っていられませんよね。かといって、窓ガラスを型板ガラスにしてしまうと、せっかくのバスコートが見られなくなってしまいますね。
近隣の状況にもよりますが、例えば上記の写真の事例のように窓のレベルを高くするなどして、周囲からの視線をうまくかわすというような調整や工夫が必要になってきます。お風呂の中から見上げたときに見える高木が、近隣の2階窓レベルからの視線を遮る役割も果たしてくれます。それと同時に、浴室内に豊かな木漏れ日を導いてくれそうです。
開口部の防犯対策をどの程度まで講じるのか、面格子や防犯ガラスの必要性、あるいは外構計画でしっかりと侵入ルートを遮断するのかなどについて要注意と言えます。
面格子を付けてしまうとこれもまた、せっかくのバスコートの眺めが台無しになるかもしれません。思い切ってシャッターの設置も視野に入れてみてもいいかもしれません。ただし、窓のサイズが小さすぎるとそれに合うシャッターが無いということもあるので、注意しましょう。
防犯上の理由から、2階以上のフロアに浴室を配置した上で、ベランダやテラスに植栽を設けてバスコートとするパターンも多いです。間取りの初期の段階である程度方針を定めておきたいところですね。
バスコートのアイデア番外編
出典:「SOLOMON TROUP」HPより
こちらはかなり奇抜な手法ではありますが、浴室内に庭を演出するというアイデアになります。システムバスでは難しいので、造作のお風呂(在来浴室)をオーダーメイドすることになるので費用がアップしていく、浴室内でも生育可能な植物を選択するなど、課題は多いですが、魅力的なお風呂になりそうです。
この事例のようにしっかりと植栽を植えるまでしなくても、例えば観葉植物を並べてレイアウトできるスペースを確保しておくといった手法も考えられます。
まとめ
バスコートは、日々の疲れを癒す入浴時間をより豊かで魅力的にする手法として非常に効果的です。
しかし一方で、防犯・プライバシーについては十分な注意が必要です。なのでまずは、十分納得できる防犯・プライバシー対策を講じた上で、豊かな入浴時間の創出に挑むようにしましょう。
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www.my-home-dream.com
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