家づくりのガイドブックA GUIDEBOOK OF IEZUKURI

いい家づくりに必要な知識やノウハウが詰まったガイドブック的なブログを目指します。

吹抜け・リビング階段etc家づくりにおける親子の接点のつくり方

f:id:Frappuccino:20190605031829j:plain

家の構成は子育てや親子のコミュニケーションに与える影響が大きいと言えます。

こんばんは。家の設計をしております、建築士の「いえもん」です。 

家の構成でよくあるパターンが、1階に共用の場所となるリビングがあって、2階に各寝室が並ぶという形が多いですよね。

しかし、この構成では、部屋同士が空間的にも機能的にも分断され過ぎていて、親と子のコミュニケーションが希薄化する傾向が大きいと言えます。

もちろん、親と子の向き合い方次第で家族の関係性やコミュニケーションは良くも悪くもなり得ますが、ここでは家づくりという観点から親と子の接点の増やし方にどのような方法があるのかについて考えていきたいと思います。 

これからの新しい住まいで、親子のコミュニケーションを大切にしていきたい方にぜひご覧いただきたいです。

吹抜け

 方法としてまず挙げられるのが「吹抜け」です。

一般的に、1階のリビングと2階の子供部屋は完全に分断されていて、コミュニケーションが生まれにくいことが多いです。

リビングに吹抜けを設けることによって1階と2階の間につながりを持たせつつ、2階の吹抜けに面した部分に共用スペースを設けると効果的です。

親子が別のフロアにいても、料理する、宿題する、テレビを見てくつろぐ、などといった様々なアクティビティが吹抜けを介してつながりを持つことができそうですよね。吹抜けを介して声が届く、お互いの気配が感じられることでコミュニケーションが生まれやすくなります。 

リビング階段

お子様が外から帰ってきたときの動線を考えてみてください。

玄関を入って廊下から階段を介して2階にアクセス、という構成は比較的多いですよね。

しかしこの場合、子供が学校から帰宅した際にリビングを経由しないで自分の部屋に直行しがちになります。そうすると、次第に「ただいま」「おかえり」のやりとりすら消滅してしまう可能性があります。

そこで考えられる手法が次の写真や図のように、2階へアクセスするための階段をリビングに設ける、あるいはリビングを通った後に階段にアクセスするような間取りが考えられます。

f:id:Frappuccino:20190611123116j:plain

f:id:Frappuccino:20190611123154j:plain

リビングの中に階段を設けるリビング階段の形式にすることによって、家族が必然的に顔を合わせることになり、家族のコミュニケーションを大切にすることができます。 お子様が帰ってきて階段に至るまでのどこかに学校用品を片付ける収納スペースがあればなお便利です。ある程度成長した時にもしかすると、夜遊びの抑制にも一定の効果があるかもしれませんね。

このように、家族間のコミュニケーションの点ではメリットが多いですが、リビング階段にはいくつか注意点もあるので合わせてご説明しておきます。

デメリット① 空調 

写真で紹介したようなリビング階段の場合、2階と一つの空間、つまりは吹抜けとしてつながりを持つので、空調効率に関しては気にしておきたいところです。

しかし一方で、昔に比べると家の気密性・断熱性はかなり上がってきています。確かに厳密にいえば、エアコンの効きが多少遅くなったり、年間で比較すると多少光熱費に差が出てくるかもしれませんが、そこまで致命的に影響が生じてくるとは考えにくいです。もちろん各住宅の断熱性能にもよっても影響は変わってくるので、住宅会社さんの意見も聞いておくとより安心だと思います。

どうしても空調が心配な場合は階段手前に扉を設けてしまうという選択肢もあります。上記で紹介したイラストのような場合であれば扉を設置しやすそうですね。

デメリット② 来客時 

確かに家族みんなが顔を合わせやすくなるのはいいことなのですが、家族以外、つまりは来客時を考えてみるとどうでしょうか。

例えば、お子様が友人を連れてきたときにいったんリビングを通って2階にアクセスすることになります。

普段の生活空間であるリビング・ダイニング・キッチンをキレイにしておく必要がありそうですね。休日でのんびりしたいときも、家族の誰かがゲストを連れてくるとなると、リビングでのんびりくつろぎにくく、身だしなみも気を遣い続けなければなりません。

このあたりをどこまで気にするのか、来客の頻度がどれぐらいかによって判断が分かれてきそうですね。

デメリット③ 圧迫感 

一般的に階段や廊下という場所は、家の中で薄暗くなりやすい場所ですが、リビングに階段を配置することによって、明るく開放的な感覚で上り下りができるようになります。これはこれで非常に大きな魅力ではあるのですが、階段というものは結構な大きさがあるもので、リビングにおける存在感もそれなりに大きく、場合によっては空間に圧迫感が生じてくる可能性もあります。

しかし、先ほどの写真に登場しているようなスケルトン階段(オープン階段、シースルー階段、ストリップ階段などとも呼ばれます)であれば、ある程度視線の抜けが生まれて軽やかな印象になります。視線とともに光、空気の通り道も確保されるので、空間における明るさの向上、空気の循環を妨げない、などといった付加的な利点もあります。

どこで勉強(仕事)をするか

f:id:Frappuccino:20190611132315j:plain

例えば親から目の届くリビングの一角にスタディコーナーを設けるという手法があります。

親が家事をしつつ、目の届くところでお子さんが学校の宿題をするような光景ですね。最近結構増えてきています。

本などの収納もある程度確保して、必要に応じて囲まれた空間にしてあげれば将来的にはそこで受験勉強にも対応することができます。共用の読書スペースやPCコーナーという位置づけの場所があってもいいですね。

あるいは、お父さんの書斎も2階に個室として設けるよりも、「書斎コーナー」としてリビングに隣接して設けることができれば効果的でしょう。 

子供部屋の規模

各ご家庭の教育方針にもよりますが、子供部屋を充実させすぎることは、お子様が部屋にこもりがちになる傾向が強くなります。

広い部屋でテレビ、ゲーム、パソコンが完備されていればあまりに快適になってしまい、ついつい子供は部屋にこもりがちになってしまいます。子供部屋は就寝・収納のための必要最小限の空間にして、基本的にはリビングで過ごしながら家族間のコミュニケーションを重視するという選択肢も大いに価値があると思います。

少し話がずれますが、そもそも、子供部屋が必要になる期間は実はそんなに長くはないということを見落としがちです。結婚の高年齢化やパラサイトシングルの増加という社会的問題もありますが、あくまでも子供はいずれは巣立っていくものという前提で考えてください。

将来的に部屋が2部屋前後余ってくるということになります。であれば、それらに費やす面積は最小限にしておき、みんなが長きにわたって使い続ける共用部、つまりはリビングやダイニングを充実させることの方が合理的です。

これらを踏まえて考えると、子供部屋の必要最小限の広さの目安としては、ベッドと机を置くための4.5畳程度が一つの基準になってくるかと思います。 

まとめ

家族間、特に親と子の接点を大切にする間取りを考えることは、とても重要であると同時に様々な手法・工夫の余地があります。

上記のような手法をヒントにしつつ、リビングというみんなで過ごす空間をいかに居心地よく充実した空間にするかがポイントになってくるかと思います。ぜひ、お子様との関わり方を見据えて間取りを検討してみてくださいね。